東洋現象分類学は、その名の通り、現象を分類していくことに長けた学問です。
これは、何でもグループ化して物事を見ようとする東洋人のクセのようなものです(元をたどればメソポタミア文明の60進法にも起源をたどることができます)。
その基礎となるのが
太極
陰陽説
三才
四季
五行説
六道輪廻
七政星学
八卦
九宮
十干
十二支
という分類体系です。この他にも、二十四節気や二十八宿、六十四卦など、さらに細かく見ていく分類法もあります。
ここでは基礎的な分類法を紹介します。
太極
太極とは、万物の根源を意味し、ものの見方としては、一見違うもの同士を全体として捉えるということです。
世の中にはあらゆる現象が存在しますが、それらを一つのまとまりとして見る、ということです。
例えば、「空腹」と「満腹」という相反する感情があったとき、大きな視点で見れば、これらは「食欲」というグループに含まれます。
ロジカルシンキングではこのようにグループ化していくことで論理性が高まりますが、東洋現象分類学はまさに体系化の学問であると言えます。
反対に、太極は万物の根源であり、その中から「陰の気」と「陽の気」が発生し、太極の中で二分されます。
これが陰陽説につながっていきます。
陰陽説
陰陽説は、ひとつのグループの中には相反する気が混在する、という説です。二律背反の事柄を表します。日本人だと味噌汁が理解しやすいかと思います。
味噌汁は注いだときはよく混ざって均等に濃さを保っていますが、時間が経過すると味噌が沈殿していきます。
ちょうどこのような現象のことを陰陽説と言って、陽の気は上昇し、陰の気は下降するという世界のルールがあります。そういう現象群を見つけ出して分類していったのが陰陽説です。
この二つの気を通して万物を理解しようとしてあらゆる自然現象を分類した結果、八掛・六十四卦という現象分類が誕生しています。
三才
三才とは、天時・地利・人和のことです。
天時
天時とは、時間の作用のことです。ある時間からある時間まで、といった範囲で時を区切り(時刻)、その時間に記号を振って、どの時間にどんな現象が発生しやすいのか、その統計をとって抽象化し、記号に対してその象意を当てています。
地利
地利とは、大地から受けるメリット・デメリットのことです。
人間という生き物は、植物のように自己でエネルギーを作り出すことはできませんから、必ず他からエネルギーを取り入れなければ生きていけません。大地の作用は、肥沃な土壌であれば植物がよく育ち、枯渇した土壌であれば植物が育つことはありません。
そうすると、人間が食す植物・動物が存在しているかどうかというのは、大地の作用に大きく左右されるということになります。
さらに、外敵から身を守る際の有利不利、戦争の際の有利不利も大地の作用を受けることになります。
人和
人和とは、周りの人々とどのように協力し合っていくか、ということです。
人間は1人で生きていくことはできません。
(物理的なことを言えば可能ですが、そのような世界では生き延びること以外に生きる目的がなくなります。しかし、1人では生まれることができません。)
ですから、必ず人と接して生きていくことになります。生まれてすぐは、必ず親兄弟親戚との関わりがあり、大人になったら苦楽をともにする配偶者を持ち、子を授かります。
社会に出れば、全く慣習の違う人と交流を持ち、交際の中で人間関係を築いていきます。
例えば地位や財産というのは、社会という人間のグループがあるからこそ魅力的なものです。人和を改めることで、その道が開けます。
四季
四季とは、春夏秋冬のことです。
物事には勢いのある時期(動)と勢いのない時期(静)があります。そのような時期は、ある日ある時いきなり訪れるのではなく、必ず兆しがあり、時々刻々と変化していきます。
その変化点となるのが「土用」です。各季節の変わり目が土用であり、年に四期あります。
現代の日本では「土用の丑の日」と言えばうなぎを食べる風習がありますが、実は、春の土用、夏の土用、秋の土用、冬の土用があり、うなぎを食べているのは夏の土用である7月の終わり頃から8月初頭に巡る丑の日ということです。
※余談ですが、もともと「土用の丑の日」は「う」のつく食べ物を食べるのが習わしなので、うなぎである必要はありません。うどんでも馬肉でも牛肉でも兎肉でも、瓜でも構いません。文化を愛で、人和を大切にする意味ではうなぎであるに越したことはありませんが…
人間は季節の循環の中で生きていきます。季節は人間の生活に直結しますから、季節による現象の分類は合理的だと言えます。
五行説
五行説は、万物は5つのエネルギーのベクトルで形成されるという考え方です。
なぜ5つなのか、という説にはいろいろ難しい論説があるようです。が、ここでは人の片手指は5本なので、分類するのに都合が良かったから、という程度で片付けておけばよろしいです。
そんな簡単なことでいいのか?と思われるかもしれませんが、日本で親しまれる「ジャンケン」に似た構造です。しかし、数が増えますから、ジャンケンよりも複雑に構成されています。物事の流転を細かく分類するには好都合です。
この5つのエネルギーには木・火・土・金・水の5つの字があてられました。
このエネルギーが循環することによって万物が形成され流転していると考えるのが五行説です。
六道輪廻
六道輪廻とは、仏教的なヒエラルキーの考え方です。
人間社会というのは、必ず6つ層を成すという考え方です。
言い換えれば、人間は必ずどこかの層に存在しているということです。
その6層とは、
天神界・人和界・修羅界・餓鬼界・畜生界・地獄界であり、各界において共通の特徴があるため、それらの現象を分類しています。
七政
七政とは、太陽・太陰(月)・水星・金星・火星・木星・土星の7つの星の位置関係によって、起こる現象に偏りがあるとする現象の分類法です。西洋の占星術と似ています。似ているというよりも、起源は同じインドです。東洋に伝わったものが七政星学になり、西洋に伝わったものが西洋占星術というふうになっただけで、実は出処は同じで、ルールは天文学的ルールを採用しています。
八卦
八掛は、陰陽の組み合わせによって構成されています。この陰陽の組み合わせは、二進法であり、組み合わせが多くなるほど万物を表すことができるとされてきました。※現代におけるIT技術が二進法の上に成り立っているというのもうなずけます。
陰陽を2つ組み合わせたものが四象と言われ、太陽・少陽・少陰・太陰という記号になります。
そしてさらに陰陽を3つの組み合わせにすることにより、8つの記号が出来上がりました。
天・沢・火・雷・風・水・山・地
です。
これらを
乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤
という字で表し、記号化して宮中から見た方角を表しました。
九宮
九宮というのは、配置のバランスことです。日本では気学として親しまれています。
3×3マスに区切った枠の中に、1から9までの数字を一つずつ配置したとき、縦横斜めすべての和が同じになる配置の仕方を定位といいます。
これは、西洋の魔方陣と同じです。
十干
十干は、甲乙丙丁戊己庚辛壬癸の10の記号です。
陰陽五行説では、木火土金水の五行それぞれに陰陽を持たせ、甲乙丙丁戊己庚辛壬癸という十干が出来上がったと説明するものが多いのですが、もともと象形・記号としてあった十干に、陰陽五行の意味を持たせた、という方がいいかもしれません。
十二支
十二支は、日本では「えと」と呼ばれているものです。
子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥の漢字で表され、日本に輸入されたときには既にそれぞれに動物の音韻が当てられていたということなので、音韻に対して字が当てられたように思われがちですが、実は逆です。
もともとは「子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥」はそれぞれ1日のうちどのようなことをして過ごす時間なのか、ということを象形した文字なのです。
転じてまずは時刻を表すようになり、十干と組むことによって日付を表すようになり、さらに月・年・世・運・会・元と大きな時間の流れに対して記号を振るようになりました。
まとめ
このように、東洋の分類形態は実にさまざまで、世に起こる自然現象の範疇を細かく表現できるように構成されています。
しかも、時間の流れを循環するものとして捉え、同じ記号の範疇では同じようなことが起こる、という現象が起こる偏り方を統計的に分類して抽象化しています。
東洋的な物の見方は、科学が発展していなかった時代の産物で、このような分類の仕方は現代には通用しないと考える方も多いようですが、今のように発達していなかった古代の中国において、天文学の理に適った暦の算出を行っていたことは驚き以外の何物でもありません。
そして、我々は西洋科学で否定されたものは素直に排除し、未科学的のものについては統計上の期待値があるものとして扱っています。
つまり、その未科学の分野こそが時間による統計的分類であり、その分類法が使われている五術は紛れもなく東西の叡智が集結し得る、人生を最大限、思いのままに、健康で長生きに生き抜く術だと我々は信じます。
あなたはどうお感じになりますでしょうか?